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「啓発すること」は、「発信すること」。これから部落差別をはじめ、あらゆる差別の問題について発信していきます。

第6分科会 部落差別事件の今日的特徴と取り組みの課題

〇報告1「全国部落調査」復刻版出版差し止め裁判の現状と課題
                 片岡 明幸(部落解放同盟中央執行委員)
1「全国部落調査」復刻版出版差し止め裁判の経過
(1)差し止め裁判の経過
(2016年)
2月5日 鳥取ループ・示現舎「全国部落調査」復刻版の予約受付開始
3月28日 横浜地裁が出版禁止の仮処分決定
4月18日 相模原支部がネット削除の仮処分決定
4月19日 部落解放同盟東京地裁に提訴(原告248人+部落解放同盟)
(2017年)
11月10日 最高裁、東京高裁の出版禁止仮処分に対する鳥取ループ・示現舎の特別抗告を棄却
鳥取ループ・示現舎の敗訴確定
(2018年)
1月22日 最高裁、東京高裁のネット削除仮処分決定に対する鳥取ループ・示現舎の特別抗告を棄却 鳥取ループ・示現舎の敗訴確定
3月12日 第8回口頭弁論(東京地裁)
11月2日 第3回弁論準備※裁判官+原告+被告の三者協議
☆被告側が反訴(損害賠償480万+30万円※出版販売+精神的損害)
(2019年)
7月11日 第7回弁論準備(東京地裁)※今は第9回、来年5月~8月結審
2 挑発・挑戦続ける鳥取ループ・示現舎
(1)鳥取ループ・示現舎が反訴
(2)「部落探訪」掲載の激化
(3)「部落探訪」とは
①興味本位で部落を暴露
②表向き「部落差別解消」を標榜、その後「学術、研究」
③「部落探訪」の本質
・部落の所在地の暴露
・裁判所の仮処分決定に対する挑戦→出版、ネット掲載禁止仮処分決定を完全無視
・部落解放運動に対する挑戦→同和地区所在地の暴露=差別扇動
3 拡散する情報と被害の拡大
(1)拡散する「全国部落調査」二次被害
佐賀県のメルカリ「復刻版」販売事件(2019年1月)
・ネットのフリーマーケット「メルカリ」に出品(200ページ、5500円)
唐津市職員が発見し、法務局に削除要請
・オンデマンド印刷したものを3冊販売→地元の新聞に掲載→売った本人(高校生)からTEL→買った人はわからない
(2)「復刻版」に触発された身元調査の拡大
○たくさんの問い合わせ電話
4 法務省の12月27日通知
①2018年12月27日 法務省人権擁護局調査救済課長
「インターネット上の同和地区に関する識別情報の摘示事案の立件及び処理について」
②「部落差別の歴史的本質を踏まえると、同和地区に関する識別情報の摘示は、目的の如何を問わず、それ自体が人権侵害のおそれが高い、すなわち違法性のあるものであり、原則として削除要請等の措置の対象とすべきものであるので、今後は削除要請の措置に従って処理されたい」
(2)法務省通知の特徴と意義
①部落差別の特徴の整理
「部落差別は、その属性に基づく差別(例アメリカ人、中国人、アイヌ民族障がい者・・)とは異なり差別を行うこと自体を目的にして政策的・人為的に創出したものであって、本来的にあるべからざず属性に基づく差別である」「特定の者を同和地区の居住者、出身者等として識別すること自体が、プライバシー、名誉、不当に差別されない法的利益等を侵害するもの」⇒したがって、あの人は部落出身ということ自体が差別になる
②「同和地区」の地域概念の整理
「同和地区は、不当な差別の対象とされる人々が集住させられた地域である」「特定の地域が同和地区である、又はあったと指摘する行為も、人権侵害のおそれが高い、すなわち違法性のあるものである」⇒したがって、どこが「部落」「同和地区」だと示すこと自体が差別となる
③「全国部落調査」の違法性を明確化
⇒目的がなんであっても、どこが同和地区だということ自体、人権擁護上許されない・差別を助長する意思がないとしても、どこが部落だということ自体が差別を助長することになる
⇒通知は、「全国部落調査」復刻版の出版、ネットへの掲載の違法性を明確にした
④「部落探訪」の違法性の明確化
「紀行文の体裁をとっているものもある」=「部落探訪」「目的の如何を問わず、それ自体が人権侵害のおそれが高い、すなわち違法性のあるもの」
⇒通知は、紀行文の体裁を装って部落を晒す鳥取ループを念頭に置いて、違法性を指摘した
⇒通知は、「差別解消」を標榜する鳥取ループを念頭に置いて、その違法性を指摘した
(3)法務省通知は、運動の成果
①「法務省通知」は、全国各地の「復刻版」「探訪」削除要請の成果
②モニタリングなどのネット差別規制活動の成果
③「削除勧告」後の対応
⇒強制措置=関係4団体への指導・「プラバイダ免責法」改正
5 「復刻版」裁判およびネット差別禁止の課題
①裁判の支援運動の拡大
②法務局・地方法務局への削除要請
・「通知」だけで終わりか⇒強制措置
・1975年「部落地名総監」事件では、回収後に焼却処分→今度(佐賀県の事件)は、国政調査権を使ってなぜやらないのか?
・復刻版事件は、解放同盟vs鳥取ループの争いではない⇒国が対応する課題
総務省との交渉
・インターネットの差別情報の全面的規制を
・プラバイダ免責法の改正=差別情報を削除しても責任を負わない
・利用者のアカウントの停止
     ↓
  早急な法整備を!
④インターネット関連4団体との交渉
・「違法・有害情報契約約款モデル条項」で「他者への不当な差別を助長する行為」
・「いわゆるヘイトスピーチ」「特定の地域がいわゆる同和地区であるとする情報」
     ↓
  本気になって取り組めば解決
⑤モニタリングの活動の強化
・法務局や地方法務局などへの削除要請
・公的機関のモニタリングおよび削除は、抑止力となる
⑥「ネット差別情報禁止法」(仮)の制定
・悪質な人権侵害行為にはペナルティ必要
・悪質な違法情報を法律で禁止、違反した場合は、罰金、懲役刑
(例)ドイツ「ネットワーク執行法」
・(刑法上問題表現)24時間以内に削除+ブロック
・(一般違法表現)7日以内に削除+ブロック
※時代の変化に対応した処罰を(日本は遅れている)
⑦人権教育・啓発の推進