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「啓発すること」は、「発信すること」。これから部落差別をはじめ、あらゆる差別の問題について発信していきます。

高校無償化からの朝鮮学校排除をめぐる課題

   裵 明玉(朝鮮高校生就学支援金不支給違憲国家賠償訴訟愛知弁護団事務局長)
 裵さんは、在日朝鮮人三世で祖父の出身地は今の韓国にあるが、在日韓国人とは名乗らず民族の呼称である朝鮮を名乗っている。
 朝鮮学校は、民族教育をする学校で日本に70校以上ある。朝鮮学校に通う意義は、朝鮮の言葉を忘れないため、朝鮮の歴史・文化(民族舞踊等)・差別の背景を知るためである。朝鮮学校では、ほとんど100%朝鮮語で、日本語は、必修。そして、何より大切なことは、本名で、差別や偏見を感じず生活できることです。
1 高校無償化制度で、各種学校(外国人学校)は、「高等学校等の課程に類する課程」が要件(旧民主党政権では対象)
→認定できる場合(文部科学省令)
イ大使館を通じて教育課程を確認できる場合→本国の認定・本国、民族団体の支援(韓国・ブラジル学校等)←台湾系中華学校は国交がなくても○、北朝鮮とは国交なしだからX。歴史的には、韓国成立に反発して北朝鮮を支持→北朝鮮も基盤を整えるために在日朝鮮学校を支援。
ロ国際的な学校評価団体による認証がある場合(西洋系インター)
文部科学大臣が指定した場合→大学受験資格(2000年)と同様の枠組み
各種学校
されることによる問題点
・私学助成制度からの排除、指定寄付金制度の不適用→経済基盤の弱さ
東日本大震災では福島の朝鮮学校が当初放射性物質の除染対象にされず
外国人学校の幼稚園等が幼保無償化の対象外に
◎朝鮮高校生への就学支援金不支給の経過
○制度開始後、文部科学大臣朝鮮学校の指定の基準となる「規程」を作成
⇒2010年度中の指定のため、11月までの申請を朝鮮学校に促す
○2010/11/23 延坪島事件発生、審査基準を無視した外交上の理由による審査停止
○2012/12/26 自民党政権成立
拉致問題が未解決」。「北朝鮮朝鮮総連の人事・財政・教育内容に対する影響」を理由とした根拠省令(ハ規程)の削除→朝鮮高校生は完全に制度から除外
◎愛知・朝鮮高校生就学支援金不支給違憲国家賠償請求訴訟
2 無償化除外の何が問題か
憲法違反
・差別に当たること。(憲法14条違反)
・人格権侵害
・学習権の侵害
○国際条約違反
[国際社会権規約委員会の総括所見2013年5月17日]
委員会は、締約国の高校教育授業料無償化プログラムから朝鮮学校が除外されていることを懸念する。これは差別である。
[人種差別撤廃条約委員会の総括所見2014年9月26日]
委員会は、高等学校就学支援金制度からの朝鮮学校の除外、及び朝鮮学校に対し地方公共団体によって割り当てられた補助金の停止あるいは継続的な縮小を含む、在日朝鮮人の子どもの教育を受ける権利を妨げる法規及び政府の行動について懸念する。
[人種差別撤廃条約委員会の総括所見2018年8月30日]
委員会は、「朝鮮学校」が未だ高等学校就学支援金の対象外とされているとの報告をさらに懸念する。不公平な取り扱いをされないことを保障すべきという前回の勧告を繰り返す。
[児童の権利条約委員会の総括所見2019年3月5日]
締約国に対し、以下を勧告する。
高等学校就学支援金制度を朝鮮学校にも適用しやすくするために基準を見直すこと。
○高校無償化法違反
○行政手続法違反
3 国の主張
○国の主張
拉致問題など考慮していない。⇒政治的考慮による朝鮮学校外しの否定
朝鮮学校が審査基準を満たさない可能性
産経新聞の報道、公安の調査。教科書の内容を踏まえると・・
朝鮮総連朝鮮民主主義人民共和国による影響が、教育基本法の禁止する「不当な支配」に当たらないことの確証が得られない。
・就学支援金が授業料以外に流用されることが懸念される。
○国の主張の問題点
朝鮮学校の運営が違法であるという客観的な証拠は何もない。
⇒産経報道や公安の調査への偏り、真実性への疑問
⇒所轄庁である県知事は違法な運営を認めていないと回答
・教育専門家による審査会は、「朝鮮学校は客観的要件を満たす」と判断
朝鮮学校が発展してきた歴史的経緯を軽視
4 国の主張を追認する司法
○無償化除外の違法性を認めた大阪地裁判決の論理
・教育と無関係な政治的理由による排除を正面から認定
朝鮮民主主義人民共和国とのつながりを民族教育の一環と認定
○教育の自由を侵害する名古屋地裁判決
・「不当な支配」の禁止=教育の自主性原理であることを軽視
朝鮮学校生徒の教育を受ける権利の軽視
・教育の機会均等を目的とした無償化の理念が骨抜きに
5 高校無償化がもたらしたもの
・2016年3月9日文部科学省都道府県知事宛に補助金に関する通知
⇒長年続けられて補助金予算の執行停止、補助金減額等が相次ぐ(名古屋も)
・社会的差別の助長、固定化
⇒インターネット上には、朝鮮高校に対する過激なヘイトスピーチがあふれている。